ワインと料理のマリアージュ
このテーマを探る道は、楽しみと同時に困難でもあります。
なにせ組み合わせの数が多すぎる上に、一つの正解というものがありません。
「ブルーチーズにデザートワイン」のような教科書的な事は皆知っていますが、仮に「世界中のガイドブックや雑誌の特集を読み漁って、組み合わせを全暗記したガイド」がいたとしましょう。
はたして、そのガイドは今現在私が体験しようとするワインと料理の組み合わせを○×でピッタリ言い当てられるでしょうか。
いえ、まず無理です。
そのガイドは私が食べようとする「いま&ここにある料理とワインの組み合わせ」について知らない上に、何より私のことを知らないのだから。
そんな私が旅行を計画して、その土地の美味しいものを調べて、名物料理をワインと合わせて食べたいと考えて、
- 食べたことのない素材を
- 聞いたこともない料理にして
- 飲んだこともない産地のワインの組み合わせる
という難題にぶつかったときに読み返すのが、この本です。
ジョアンナ サイモン著「ワインとフード」
(Joanna Simon “Wine with Food” )
序文に著者の矜持あり
-Introduction- はじめに
ワインと料理の合わせ方について、これぞという決定的な解説書を待ちわびる声が多いようですが、残念ながら本書はその要望に応えるものではありません。
その種の本は今後も登場しないというのが私の考えです。
え!なに? 今から「いかに無理難題か」を延々と読まされるの?
いえいえ、ご心配なく。
ページをめくると、投げやりとは真逆の姿勢で、とても注意深く、様々な要素を検証して、数多くの組み合わせを提案しています。
- 各国料理の特徴をふまえたマリアージュ例と、注意すべきポイント
- 避けたほうがいい組み合わせ
- 昔の組み合わせノウハウが現代では通用しない理由
つまり序文の言葉は、慎重に広く深く検証した上で、あるレベル以上の理解を得た著者が到達した、ある種の矜持なのです。
一流の研究者は、「どこまで解っていないか、がハッキリと解っている」ものです。
日本料理とワインも載っています
郷土料理の多いフランスとイタリアにはページを多く割いています。
ページは少ないですが、インド、中国、タイ、日本の料理まで特徴をふまえて提案されています。
実際にワインと組み合わせた経験がないと書けない内容です。
面白い組み合わせが載っているので、ここでクイズです。(答えはこのページの下)
米Amazon.comのレビューも高評価寄り
米Amazonのレビューでは、☆☆☆☆☆評価もいくつかあって、読み込んでいる食通がいるようです。
面白いのは「この本、アメリカの料理には役に立たないよ」と低評価しているアメリカ人がいて、それに対して「呆れた意見だ」と反論しているアメリカ人がいること。
まさに序文で書かれていることが証明されています(笑)
(著者はイギリス人のワイン記者、女性)
今、手に入れるなら古本で
20年近く前の実用書ですが、今でも充分に使えます。
巻末にはワインから料理←→料理からワインを逆引きで探せる索引が付いています。
掘り下げた内容ですが小難しさは全く無い。日本語訳も監修もいい仕事をしています。
この日本語版は定価3440円+税。現在は古本でしか出回っていないようです。
Amazonのマーケットプレイスを見ていると、時々1,000円以下で買えるので、このテーマに関心のある方は要チェックです。
このテーマを探る道は、楽しみと同時に困難でもあります。
さあ、今日もワインと料理を合わせる難しさに立ち向かおうではないか。(本当は楽しくてしょうがない)
<クイズの答え>:シェリー(フィーノとマンサニーリャ)
年間6000本以上のワインをテイスティングした中から「これは!」と唸った本当に美味しい銘柄情報をお届けします。
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