カリフォルニアワイン好きならご存知のMaboroshi<マボロシ>ワイン。
ワイン造りの夢をかなえた日本人醸造家の作品です。
世の中にレアなワインは幾つもありますが、「生産量極少で、美味しくて、プレミアム価格のついてないもの」となると、手に入れること自体が奇跡みたいなものです。
このワインは、生まれた背景を知ってこそ、味わい深い。
夢か幻みたいな話
生産者の私市(きさいち)さんがワイン造りを目指して最初にフランスに行くことを決心した時、知人に『外国でワインをつくるなんて、夢か幻みたいな話』と言われたそうです。
後にカリフォルニアへ移った後も、それがずっと心の片隅に残っていていて、自分のワインが生まれた時「これは幻だったかもしれない」と名付けました。
ラベルは絵画のようで、ミステリアスな鷲(スクリーミング イーグル)と羊(ムートン)が描かれており、一度見ると忘れられないインパクトのあるデザインです。
幻<マボロシ>ワイナリー登場
ここのワインと初めて会ったのは、2002年頃、ワイン仲間がくれたカリフォルニア土産でした。
カリフォルニアワインなのに「まぼろし」なんて変わった名前だなと思って、いろいろと聞いてみましたが、日本人のワイン生産者が渡米し、夫婦で造っているということぐらいしか判りませんでした。
当時まだ日本に輸入されていなかったところ、あるインポーターの社長さんがこのワインを気に入り、現地まで私市さんを訪ねて口説いて、仕入れることができるようになりました。
初ヴィンテージから大人気
最初のヴィンテージは1999年。メルローだけで、生産量わずか1644本(137ケース)。
ロマネ・コンティが約6000本ということを考えると、いかに貴重品かおわかりいただけると思います。
2017年現在、幻<マボロシ>ワイナリーでは、シャルドネ、ピノ ノワール、カベルネ ソーヴィニヨン、スパークリングを作っています。
個人的にはシャルドネのスタイルが好きで、毎年新ヴィンテージが出るたびに楽しみにしています。
熟したパインやナッツの香ばしい香り、ミルキーで丸い口当たり、しっとりと上品なコク。派手派手しくなく、どこか優しさを感じるところが、幻ワイナリーらしい仕上がりです。
私が会員制ワイン通販の担当だった時、1万円弱の価格帯にもかかわらず、多数のリピート注文をいただきまして、人気の高さに驚きました。
マボロシ ワインの在庫は、カリフォルニアワインに強いWassy’sさんが潤沢 |
ピノ ノワールへの想い
生産者の私市さんがワイン造りを志したのは、あの「ラ ターシュ」に出会ったことがきっかけになっています。
ラ ターシュと言えば、ご存知「時にはロマネ コンティをも凌ぐ」と評される最高級ワインの一つ。もちろん品種はピノ ノワールです。
私市さんは、ワイナリーを設立してからメルロー、カベルネなどでワインを生産しつつ、「いつかは、最高のピノ ノワールを」という夢を持っていました。
そして、なんと自分の家を売り払って、良質のピノ ノワールの畑を買い、夢を叶えたのです。
私は、幻 ピノ ノワールを口にした時、思わず、ご夫婦の笑顔が目に浮かびました。
まるで、「勘当同然で日本を出たけれど、ほら私達はこんな良いワインをつくることができましたよ」と言っているかのように・・・。
レアもの「デ ローチ マボロシ ヴィンヤード」
マボロシ畑で収穫されたピノノワールの半分をDe Loach<デ ローチ>社が買い取っており、その葡萄だけからつくられた貴重なキュヴェがあります。
デローチはロシアン リヴァー ヴァレーの老舗ワイナリーで、重過ぎないブルゴーニュスタイルのワインが得意。
その醸造技術とマボロシ畑の高品質なピノが合わさったプレミアムな1本となっています。
価格は9,000円ほど。
希少価値で30,000円以上の値が付いているブルゴーニュ特級畑を買うくらいなら、このスペシャル ピノを3本買う方がいいな、と思います。
ワインショップでほとんど見かけませんが、珍しいことにAmazon(直販)に在庫があったりするので要チェックです。
以前、私市さんにお話を伺ったときに、ビオディナミ(バイオダイナミック農法)に力を入れていると仰っていました。
幻かもしれなかったワインが生まれ、なおも進化を続け、新たな高みへ上っていきます。
夢追い人にバッカスの御加護あれ!
Maboroshi Vineyard & Wine Estate<公式サイト>
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